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ティモシー・チューイ

(c)Dennis Sweeney

演奏家

ティモシー・チューイ

ストラディヴァリウス1709年製ヴァイオリン「エングルマン」

エングルマンは、私がこれまで出会った中で最も濃い、深みのある音色のヴァイオリンの一つです。その音色はひと時で鮮明かつ精緻でありながら複雑で深みに満ちており、まるで一つ一つの音に物語があるかのようです。常に驚かされるのは低音G弦から舞い上がる高音域まで、全域を通して色彩と味わいを放つこの楽器の力です。

最近になってエングルマンには独特の個性があるという事を段々と意識し始めました。その強烈さに圧倒される時、私は一旦休み、別のヴァイオリンを弾き、そして新鮮な耳で再び演奏に戻ります。このプロセスを通して、このヴァイオリンが持つ音色の独自性を真に理解できるようになります。もはやパワーと龍のような存在感だけではなく、雷のような響きから囁くようなニュアンスまで、その全域の表現力のすべてを駆使する方法を学ぶことがゴールとなります。

弾くたびに、今でも「わあ!」と感じさせてくれる瞬間が訪れます。それは私を刺激し、挑戦させ、インスピレーションを与え続けてくれます。楽器が何をもたらしてくれるのかを私はまだ発見し始めたばかりだと感じています。

(2025年6月執筆、2025年9月開催「ストラディヴァリウス・コンサート2025」プログラム掲載)

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